3.日本の林業再生・バイオマスエネルギー化の基本的考え方
(森林資源の利用可能量とバイオマスエネルギー需要)

人工林のイメージ
人工林のイメージ(樹冠が尖る感じ)

葉の細い針葉樹主体
スギ、ヒノキ、マツなど
軽く軟らかく加工しやすい
人工林

人工林(人が植え、本来人が育てる)
天然林のイメージ
天然林のイメージ(樹冠が丸い感じ)

葉が広く平たい広葉樹主体
クヌギ、ナラ、ラワンなど
重く堅く加工しにくい
天然林

天然林(自然に生え、本来人が育てる)

  日本の森林資源は厖大で、蓄積量は49億m3もあります。その利用可能量は、資源を減らさない観点から年間森林 生長量の範囲内とします。日本の年間森林生長量についてはいろいろな説があるようですが、林野庁の100百万m3/Y を通説と考えます。日本の森林の利用量は約80百万m3ですが、その3/4は輸入材であり、国産材は1/4の20百万m3 しか使われていません。コストが高い、品質が劣るなど競争力が弱いことが日本の林業の問題です。
しかも、需給ギャップを更に大きくする話ですが、実は日本の森林年間生長量100百万m3は過小評価していて、 本来はずっと大きいというのです。何故なら森林面積ha当りの年間生長量を西欧と比べると日本は極端に小さく、 西欧の1/2〜1/3程度ですが、この低い理由は、日本では放置され成長が少ない天然林の比率が過半と大きい事と  人工林が間伐されず放置され生長が妨げられることの2つと考えられます。
成長量の範囲内で伐採し、伐ったら植える、間伐すると言う循環的な木材利用をすれば、本来的には日本の人工林は 10m3/ha(現80→改善後104百万m3)を確保できるでしょう。天然林は広葉樹主体で現在は殆ど放置状態ですが、天然林の 生長分を20〜30年毎に更新伐(1ha程度の小面積皆伐を分散的に行う)すれば萌芽更新し造林の手間なく生長量8m3/ha程度が期待できます。 天然林は国立公園等の環境保全が考慮されるべき範囲にあるので、その60%を利用可能と考えます。人工林と天然林合計で本来的な利用 可能量は147百万m3になりますが、以上のまとめを(注7)に示しますが、欧米に比し控えめに見てます。

日本の年間森林成長量
森林成長量/伐採量と木質燃料の墺独日比較


  上記のように日本の森林資源は厖大ですが、ほとんど放置状態なので、森林の荒廃は深刻です。本来造林して 積極的に利用すべきとされる人工林も大部分の森林は間伐もされず、間伐されても放置間伐の状態で、森は荒廃し暗く生長が妨げら れています。天然林もかっては里山で薪炭生産を行っていましたが1960年頃から化石エネルギー化により利用されなくなり事実上 放置状態となり森は荒廃しています。森は利用しなければ荒廃するのは必然です。(注9)

  日本の木材自給率が低い理由は、コスト競争力、安定供給力の問題と安定需要のないことです。従って大事なことは @森林生長量に見合った安定需要を確保すること、 Aその需要量をコスト・品質競争力ある状態で作りこむことの2点です。

  まず需要量の確保です。 国の木材自給率50%の目標が作られ、林業再生に努力は傾けられたものの顕著な進展は 中々難しい状況かと思います。木材の用途も種類多く各々の高品質・低コスト・安定デリバリーの要求が厳しく、75%を占める輸入材 に置換わるのはかなり時間を要するでしょう。
  つまり、厖大な森林資源の利用可能量に対して需要量は極端に少ないということです。実は 西欧は木材需要量の半分近くを木質バイオマスエネルギーとして利用して林業の規模を拡大し競争力を高め、その結果 石油の1/2と言うコストを実現し、輸入石油を追い出しているのです。

そこで提案ですが、日本でも林業再生を顕著に進展させるために林業の主用途先にバイオマスエネルギー用途を加える事を強力に推進 してはどうでしょう。従来日本ではバイオマスエネルギー用は製材用途の残材や間伐材を使うと考えてきたので利用量に制約があったの ですが、残材だけではなく、天然林の更新伐など立木伐採材をエネルギー用途に使おうということです。これは西欧では 実施済みです。エネルギー利用は全国共通品質で、製材用途ほどの品質の厳しさはなく、コストさえ安ければ需要は厖大にあります。

  日本の暖房給湯需要がどの程度あるか?ですが、エネルギー白書2011(注10)によると、民生家庭+民生業務の暖房給湯 合計は最終エネルギー消費合計の13.5%(464*1012Kcal) と莫大な量を使っています。一方木質バイオマスの 発生エネルギーは木質バイオマスm3当り1275*103Kcal/m3(=3000Kcal/kg*比重0.5*熱効率0.85として )なので、 仮に全暖房給湯需要にバイオマスエネルギーを利用すると仮定すると、必要な木材の幹材積は364百万m3/年となります。 (=464*1012Kcal/(1275*103Kcal/m3)) 
  先に述べたように木材の利用可能量は147百万m3なので、仮に全木材を 費やしても全暖房給湯需要には足りませんが、かなり大きな役割を果たせる可能性のあることがわかります。   更に派生的効果として、バイオマス市場の拡大は間伐材、残材の置き捨ても無くすはずです。

  

林業とエネルギー事業のマスフローイメージ

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